素敵なあの人を形づくった本や映画、音楽、漫画などの“推しコンテンツ”をたどるカルチャー連載。今回ご登場いただくのは、作家の辻村深月先生。人生のさまざまな場面で出合い、心を動かされ、今の自分につながっている大切な作品について語っていただきました。

作家
辻村深月先生
つじむら みづき●『鍵のない夢を見る』で直木賞、『かがみの孤城』で本屋大賞を受賞。『ツナグ』『朝が来る』『傲慢と善良』など著書多数。
写真/長田果純
CONTENTS
小説の世界と、傍らの現実がつながるような体験を味わってもらいたいです
子どもの頃から物語性のあるフィクションが好きで、その中でもいちばん身近にあったのが小説でした。小学校高学年のときに綾辻行人さんの「館シリーズ」に出合ってからは「小説でなければ描けない物語がある」と感じ、「私もミステリー作家になりたい」と思うようになりました。新刊の『ファイア・ドーム』のテーマは噂。25年前の誘拐事件をきっかけに、地方都市に暮らす人々が噂に翻弄される物語です。事件とは誰かの不幸でもある。そのことを忘れずに、刑事事件によって当事者や周辺のみならず、多くの人が揺れる様子を描きました。上巻では、教え子が事件に巻き込まれたことで、一夜にして誹謗中傷の対象になってしまう小学校教諭・佐村美冬の視点を通じて、皆さんにも噂の渦中を一緒に体験していただくことになるかもしれません。噂の怖さや残酷さを描いていますが、下巻を書く中で、この小説は噂によって傷つけられた人々がどうそれに立ち向かい、自分や周りを守っていくのかという話なのだと気がつきました。読み終えたとき、自分のそばの現実と小説の世界に通じ合うところがあると感じてもらえたら嬉しいです。
『ファイア・ドーム』(上巻・下巻)

25年前、地方都市で発生した百貨店受付嬢誘拐殺人事件。好奇心とあやふやな情報がつくり上げた噂が、新たな事件を呼び起こす。連載に4年、改稿に3年を費やした長編ミステリー。
『ファイア・ドーム』(上巻・下巻)
辻村深月著 小学館 各2090円
01 宮部みゆきさんの社会派ミステリー

今読んでもまったく古びない! 本当に素晴らしいです
「一生に一度でいいから社会派ミステリーに挑んでみたい」。そんな憧れを抱いたのは、宮部みゆきさんの小説を読んできたからだと思います。『火車』に『理由』『模倣犯』や『楽園』『名もなき毒』……と好きな作品を挙げるときりがないのですが、宮部さんの小説がすばらしいのは、抜群に面白い物語を夢中で追いかけた先に、本を閉じたあとで社会や現実の見え方が変わること。作家になって、綾辻さんや宮部さんと実際にお会いする機会もありますが、お二人とも今もとても素敵で憧れが強まっています。変わらず推し続けられるのが最高に幸せです!
『火車』
宮部みゆき著 新潮社
1210円
02 『ポレポレ東中野』で見るドキュメンタリー映画

映画に没入する時間は多少無理をしてもつくります!
知らない視点に気づかされるという意味では、ドキュメンタリー映画が大好きです。特に東京の映画館『ポレポレ東中野』の上映作品には多くの刺激を受けていて、気になる作品は多少無理をしても見に行くようにしています。冤罪で被害を受けた方たちの交流を描いた『獄友』は、製作チームの取材姿勢やまなざしに深く感銘を受けました。これまで見てきた作品の情景が、書いている小説の参考になることも多いです。
『獄友』
監督:金聖雄 配給:Kimoon Film
03 読んで元気になれる『ドラえもん』の漫画

読んで元気になれる『ドラえもん』の漫画
子どもの頃から大好きな『ドラえもん』は、執筆中の息抜きであり元気の源。『ドラえもん』はどれだけすごい冒険に出かけるときでも始まりは常にのび太の日常で、いきなりなんでもありな展開にはならない。私も大きな事件や不思議な設定を書くときほど、読者の皆さんの日常と地続きな感覚から始めることを心がけています。引き出しから不思議な世界につながる『ドラえもん』を読んできた経験が生かされています。
てんとう虫コミックス『ドラえもん』全45巻
藤子・F・不二雄著
小学館 各594円
取材・原文/松山 梢 ※BAILA2026年8・9月合併号

BAILA編集部
30代の働く女性のためのメディア「BAILA」。ファッションを中心にメイク、ライフスタイルなど素敵な情報をWEBサイトで日々発信。プリント版は毎月28日頃発売。














































































