男性たちが実際に沼っている女性とは? そして、どんな経緯で沼っているのか? “沼った側”の視点を学ぶべく男性芸人にインタビュー! カルチャーに精通する3人に、それぞれが沼ったキャラクターと、その理由を聞きました。
ハライチ 岩井勇気さん:アニメ『冴えない彼女の育てかた』の加藤 恵
ハライチ
岩井勇気さん
1986年生まれ、埼玉県出身。ニコニコチャンネルの「ハライチ岩井勇気のアニ番」を放送中。
カテゴライズできないミステリアスさが魅力
“沼らせる女”と聞いて思いつく特徴は、自分に都合よく話しかけてくれて、ほどよくエロいこと。コミュニケーション能力が高すぎると「違う世界の人間なんだ」と思ってしまうし、エロすぎると「いろんな経験をしてきたんだろうな」と感じてしまう。そんな“都合のよさ”を求めていて、それをかなえてくれるのがアニメのヒロインだったりします。でも、この加藤恵というキャラクターはその真逆。
ヒロインっぽさがまるでなく、何を考えているかわからない言動をとるので、彼女はジャンル分け不可。僕らは他人をカテゴライズすることで安心する部分がありますが、それができない加藤恵は、ミステリアスで現実を本当に生きているようにすら思えるんです。
現実の女の子は、つきあったらどんな感じかを想像しきれない部分があって、加藤恵にもそれを感じるんですよね。つきあったからこそわかる部分や、つきあった人にしか見せない部分がたくさんあるように感じられて、楽しそうだなと期待が高まります。
『冴えない彼女の育てかた』
原作:丸戸史明
監督:亀井幹太
制作:A-1 Pictures
オタク高校生の安芸倫也が運命的な出会いをしたのは、クラスで目立たない普通の少女・加藤恵! 恵をヒロインにしたギャルゲーを制作しようと考える。
©2015 丸戸史明・深崎暮人・KADOKAWA 富士見書房/冴えない製作委員会
マヂカルラブリー 野田クリスタルさん:マンガ『ラブひな』の青山素子
マヂカルラブリー
野田クリスタルさん
1986年生まれ、神奈川県出身。総監督を務めたゲームソフト「スーパー野田ゲーWORLD」が販売中。
硬派なのに実は隙だらけ。そのギャップがたまらない!
剣術の一門であり、しつけの厳しい家庭で育った青山素子は、きまじめで曲がったことが大嫌い。ずっと女子校出身のため男子に免疫がなく、主人公の浦島景太郎を激しく警戒し、景太郎の軟弱さとおっちょこちょいな性格を知ると、ますます毛嫌いします。まあ、最終的には彼に片思いするんですけどね。
僕にとっての青山素子の魅力は、まず、家の中でも常に袴姿という古風な見た目で、性格も硬派なのに、実はいろんな面で隙だらけというギャップ。彼女の本性がどんどん明らかになるにつれて、僕の心はますます引き込まれていきました。
特にグッときたのが、最初は大嫌いだった景太郎を大好きになるところ。ひどく軽蔑して罵倒していた相手に対して、赤面してしまうほど恋する彼女が、とにかく可愛くて、愛おしくて……。
青山素子のような女性と出会ったことも、恋に落ちたこともありませんが、きっと存在するはず、という妄想はやめません。
『ラブひな』
赤松 健著 講談社
新装版 全7巻 各968円
東京大学への合格を目指す主人公・浦島景太郎が女子寮「ひなた荘」の管理人となり、住人の美少女たちとドタバタを繰り広げるラブコメディ。
おいでやすこが こがけんさん:映画『(500)日のサマー』のサマー・フィン
おいでやすこが
こがけんさん
1979年生まれ、福岡県出身。映画と洋楽に精通し、『BRUTUS』のシネマコンシェルジュを務める。
駆け引きや噓、忖度は皆無。沼らせる女のカリスマです
サマーは、主人公のトムや僕のような冴えない男にとって高嶺の花。キュートな見た目にセンスが感じられる服装、屈託がない素直さ。そんな女性に対して僕らサブカル男子は「きっとはやりの音楽を聴いているんだろう。ザ・スミスのようなバンドは知らず空虚な人生を歩んでいるんだ」と思うことで、心のバランスを保っているんですね。だからこそ、トムのヘッドホンから漏れるザ・スミスの曲にサマーが気づいて「その曲、好き」と言われたとき、心を無惨にも乱され、僕はトムとともに一瞬でサマーに沼っていました。
サマーについて特筆すべきは、一切の駆け引きや噓、忖度のないところです。彼女の行動はすべて素直な欲望からきていて、俗的な下心は皆無。それほど自分が確立されており、人は好きだけれど執着するわけではないという、まさにカリスマ的存在ですね。正直、完璧すぎて、やめてくれよ!という気持ちです。手に入らないのは目に見えているのに、好きにならずにはいられないんですから。
『(500)日のサマー』
ディズニープラスのスターで配信中
地味な毎日を送るトムは、ある日、秘書として職場にやってきたサマーにひと目ぼれする。音楽の趣味を通じて交流が始まり、サマーへの恋を募らせていくが……。
© 2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.
構成・原文/中西彩乃 ※BAILA2023年6月号掲載