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【宇宙飛行士 野口聡一 × 大江麻理子スペシャル対談〈前編〉】2024年の今、宇宙ってどうなってますか?

2009年に米ヒューストンのNASAで行われた宇宙飛行士 野口聡一さんとの対談をきっかけに宇宙が好きになった大江麻理子さん。それから15年。久しぶりの対談では、宇宙ビジネスの今について語り合いました。

スペシャル対談

“この5年くらいで市場価値が急激に高まり宇宙が面白い時代に入ってきています” 野口さん

“宇宙を活用したビジネスが今後さらに伸びると期待されているんですね” 大江さん

宇宙飛行士の経験を実社会に生かすためにダボス会議にも参加

大江 最近、ご活躍の場がかなり多岐にわたっていらっしゃいますね。

野口 宇宙飛行士の経験を社会にどう生かすかを考え、色々な場で仕事をしています。たとえば地球環境問題。自分が宇宙で見た地球の美しさを伝えることを通して、気候変動の課題に取り組んでいます。企業の方々と一緒に動く中で今年1月にダボス会議へ行ってきました

大江 スイスのダボスで世界中の政治や経済におけるキーパーソンが一堂に会して話し合う会議ですよね。雰囲気はいかがでしたか?

野口 以前、世界中の首脳を宇宙に連れて行って国境のない地球を見せたら、いろんな問題が解決するのではと思っていたことがあるんです。それを地球上で実現しているのがダボス会議だと思いました。スイスの極寒の山の中で一週間、地球環境や国際経済の話をディスカッションするんですよ。

大江 具体的にどんな議題でしたか。

野口 まず、地政学的な問題。ウクライナ侵攻、イスラエルとパレスチナの問題で中東全体が不安定化していること、世界各地の様々な分断をどうするのか。今年は世界的に選挙が多い年なので、世の中がどうなっていくのか……など。僕は宇宙関係が専門なのもあってアメリカを注視することが多いのですが、アメリカの分断は深刻です。“もしもトランプが”を略して「もしトラ」なんて言われますが、今や「ほぼトラ」。でも国民の約半数が支持していない状況は変わりません。「本当に僕たちの住む世界ってこのまま分断していいの?」という声はすごく聞こえてきましたね。

大江 解決の難しい問題です……。

野口 あとはやはり気候変動について。問題の重要性は皆さん理解した上で、具体的にどう解決していくのか。先進国だけで解決できるものではないので、新興国に対する援助も必要になってきます。

大江 グローバルサウスと呼ばれる新興国に向けての支援として、何ができるのかというところですよね。

野口 そうですね。ただ、グローバルサウスと言っても決して一枚岩ではないんだなと。グローバルサウスの中でも温度差があるのを、僕も今回行ってみて改めて感じました。

大江 成長の中身も国によっての事情もまったく違いますものね。

ダボス会議のいちばん大きな話題はAIの進化。情報の真偽が判別困難に

野口 いちばん注目されていたのはAIの話題でした。ChatGPTをはじめ、一年前にはそれほど具体的でなかった生成AI、AI全体の進歩が、産業や政治経済も含めて非常に大きな影響を持つことが明らかになってきました。

大江 米オープンAI社のサム・アルトマン氏も登壇しましたよね。

野口 はい。会場の熱に時代の変化を感じました。AIの進化に関しては、文字を自在に扱うチャットから、今は静止画や動画にまで及んでいます。少し前の“AI美空ひばり”みたいな、見ていて少しロボットっぽいなと感じる時代から、スムーズに話すAIの時代に入っていくんだなと。そうなってきたときに、「何が本物で何が偽物か」が本当にわからなくなるなと思いました。

大江 そこなんですよね。

野口 現在においてもAIが生成する文章や画像は非常に精巧で、すでに判別が難しくなっていますよね。もちろん判別する方法もあるかと思いますが、今後はネット上やテレビで静止画や動画を見ていても、AIか人間かがわからなくなる時代が来ると思います。普通に人間と応対しているつもりが実はAIだった、というようなこともありえます。話す内容、声色、映像の一つひとつは技術的にかなり高いレベルに到達しているので、それが組み合わさったときの破壊力ってやっぱりすごいなあと。

大江 判別が難しい中でどうだまされずに生きていくか、とても難しいです。特に選挙イヤーの今年は、各地で問題が起きそうですよね。ダボス会議のテーマは、地政学、環境、AIあたりが中心だったわけですね。

この5年くらいで宇宙の市場価値が高まり宇宙ビジネスが活況に

野口 続いて、宇宙の話にまいりましょう。大江さんがNASAで訓練をしていた僕を訪ねてくださり、対談をしたのは今から15年ほど前でした。その後急激に市場価値が高まっているのが宇宙の世界です。特にこの5年くらいの間に状況が変わっていて、今回、私なりに整理して大江さんにレクチャーしたいと思います。

大江 それは大変ありがたいです!

野口 前回お話していた頃の宇宙に関する話題といえば……。

大江 2009年に野口さんが乗られたソユーズはロシアの宇宙船。

野口 そうです。有人宇宙船は一時期、世界でロシアが中心でした。宇宙市場規模に関する知識としては、その後の2017年の試算で、2040年の宇宙市場規模が1兆ドル(1ドル=140円換算で140兆円)ぐらいと予測していたんですね。その予測が今では倍くらいになっています

大江 倍とは! 内訳が気になります。

野口 何が伸びると思われているかというと、ロケットや人工衛星よりも、二次的なインパクト、社会で宇宙を使ったビジネスが伸びると期待されています。たとえばインターネットが普及したときに、急にソーシャルメディアやEコマースといわれるものやサービスの取り引きがバッと伸びたじゃないですか。そういうことが宇宙がベースとなって一気に進むであろうという見通しです。今回のダボス会議で僕が参加した、第四次産業革命委員会でも取り上げていました。これまで人類の歩みの中で、イギリスで蒸気機関ができたのが第一次産業革命。次にアメリカで鉄が作られるようになり重工業が発展したのが第二次産業革命。半導体やロボットなど日本の高度成長を支えたのが第三次産業革命。そして第四次産業革命はそれに次ぐくらいのインパクトが起きて、それのひとつが宇宙ビジネスだということです。

大江 日本はどうなりそうですか?

野口 日本の宇宙産業はまだ市場としてはそれほど大きくなく、内閣府のデータによると現在の市場規模が1・2兆円ぐらいです。2030年代早期までの倍増が政府の目標で、伸びしろがあるとも言えますね。これから急激に変わっていくと思います。

大江 最近ではスペースワン社がロケットを打ち上げるなど日本の民間宇宙企業の動きも活発ですね。

野口 そうですね。ほかにもアイスペースやインターステラテクノロジズなど、日本をベースにする宇宙経済、民間の力も増えてきています

野口聡一

宇宙飛行士

野口聡一


1996年宇宙飛行士に選抜。2005年、2009年、2020年と通算3回の宇宙飛行に成功し、世界で初めて「3種類の宇宙帰還を達成した宇宙飛行士」としてギネス記録に認定。2022年JAXAを退職。東京大学、日本大学の特任教授をつとめる。

大江麻理子

大江麻理子


おおえ まりこ●テレビ東京報道局ニュースセンターキャスター。2001年入社。アナウンサーとして幅広い番組にて活躍後、’13年にニューヨーク支局に赴任。’14年春から『WBS(ワールドビジネスサテライト)』のメインキャスターを務める。

撮影/須藤敬一 ヘア&メイク/桑野泰成〈ilumi.ni〉(大江さん分)、鎌田亜利紗〈アートメイク・トキ〉 (野口さん分) スタイリスト/森岡 弘(野口さん分) 取材・原文/佐久間知子 ※記事の内容は2024年2月の取材時点のものです。 ※BAILA2024年5月号掲載

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