30代・40代の不妊治療のお悩みや疑問に医師が回答! 今回は「卵子の数」についてお届けします。
Q:生理がたまにしか来ない人は、年齢のわりに卵子の数が多い?
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30代&40代女性の「リアルな妊活・不妊治療悩み&疑問」!
・「初潮は15歳。生理痛が酷くて20代からずっと低用量ピルを飲んできて、現在40歳。生理での排卵の回数が人より少なかったということは、卵子もたくさん残っているということ? これから不妊治療を始めるには有利?と淡い期待を抱いています。逆に早めに生理が来て、ピルを飲まずに来た人は残り卵子数が少ないのでしょうか?」
・「40日周期で生理が来ています。27日周期の人よりも生理の回数が少ない=卵子がたくさん残っていると思っていたのに、AMH検査での数値は悪く、カルテに『低AMH』と書かれていました。女性らしい体型ではない私、女性ホルモンが少なめで、もともと卵子が少なかったということ!?」
・「40代ですが童顔で若くみられ、転職先でも『20代だと思ってた!』などと驚かれています。そうは言っても40代も半ばに近い年齢。新婚で、一刻も早く不妊治療を始めたいと思っているのですが、35歳の夫からは『見た目が若いから不妊治療なんてしなくても産めるはず』などと楽観的なことばかり言われます。夫の言うとおり、見た目年齢は妊娠率に影響する、なんてことはあるのでしょうか!?」
医師が回答!
神戸大学文学部心理学科、兵庫医科大学卒業
兵庫医科大学、西宮市立中央市民病院、パルモア病院を経て医療法人オーク会へ。
エジンバラ大学で未成熟卵の培養法などを学んだ技術と自らの不妊体験を生かし、診療にあたる。また、早くから不妊と肥満の関係性に着目し、2ヶ月で14kgの減量に成功した患者様の排卵障害が改善したことから、ダイエット・プログラムを発案。国内外の学会発表多数あり。
【ANSWER】卵子の数は、女性の見た目年齢とは関係なし! 初潮以降、毎日減っていく
「AMH(アンチミュラー管ホルモン)は、発育過程にある卵胞から分泌されるホルモンで、女性の卵巣予備能を知る指標になると考えられているもの。 AMH濃度を測定することで、残っている卵子(卵胞)の数を測定し、卵巣年齢が何歳くらいか推定できます。
この卵子が多いか少ないかは、女性の外見ではまったく分からないんです。若く見える方であっても卵子の数が多いというわけではないのです。AMH検査(卵巣予備能検査)をしてみないと卵子の数は判断できません。
もちろんこの数が少なくても、妊娠に至るケースは多いです。というのも、1回の妊娠成立に最終的に必要な卵子の数はひとつだけなのですから。
とはいえ、ひとつひとつの卵子の妊娠率は、純粋に年齢相当、卵巣予備能が高いからといって安心してはいけません。卵巣機能と卵子の質は異なります。卵子の年齢は、その女性の年齢とイコール。卵子の年齢は、女性が生まれてから排卵までの時間なのです。
女性は体内に卵子のもととなる設計図のような『卵母細胞』を持っています。『卵母細胞』は胎児のときから分裂が始まり卵子ができていき、産まれる時点でその分裂が休眠します。
胎児の期間に卵子の数はピークを迎え、その後の休眠状態では卵子の数は減りませんが、初潮が来てからは卵子はどんどん減っていきます。男性の精子が作られ始めるのは、男性が思春期に入ってからなので、女性に比べるとだいぶ遅いんですね。
『生理のたびに卵子がひとつ減っていく』と理解している患者さんも多いのですが、それは誤解です。月経で使われなかった未熟な卵子も吸収されてなくなりますし、たとえ生理不順で月経が止まってしまっている方でも、毎日卵子の数は減っていくのです」
【ADVICE】卵子の数が減りやすい生活習慣は喫煙
「胎児の頃に作られた卵子が初潮以降どんどん減っていき、残り1000個くらいになると排卵がストップ、閉経します。
卵子が吸収されて消えていくスピードは、37.5歳くらいからハイペースになります。
ピルを飲んで排卵をコントロールすることで卵子の吸収が少し抑えられるのではないかという報告もありますが、はっきりとは分かっていません。実際にずっとピルを飲んできた方でも、年齢を重ねることで確実に閉経しますので。
卵子の吸収を抑える方法は明らかになっていませんが、卵子が減りやすい習慣としてはっきり分かっているのは、喫煙の習慣です。他に、抗がん剤の使用も卵子が減ることが分かっています」
卵子の数については、自己判断せずにクリニックで検査を受けて。
取材・文/櫻木えみ