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よしながふみ最新作!“名前のつかない関係性”に心打たれる『環と周』をレビュー【バイラ女子におすすめコミック】

漫画を愛するライター・中川 薫がバイラ女子におすすめの漫画をピックアップ! 今回は、人気ドラマ『大奥』『きのう何食べた?』の原作者よしながふみの最新作『環と周』をレビューします。

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中川 薫

中川 薫


漫画・音楽・旅好きのライター。今号で連載を卒業することとなりました。13年間ありがとうございました!

誰かの名もなき“好きのかたち”は、あなたの“好きのかたち”とつながっている

『環と周』をレビュー

©よしながふみ/集英社

人気ドラマ『大奥』『きのう何食べた?』の原作者の最新作。“環(たまき)”と“周(あまね)”という名の、それぞれ性別も時代も関係も異なる主人公たちが織りなす5編を収録したオムニバス短編集だ。

現代編での二人は中学生の娘を持つ夫婦。娘が女友達とキスする現場を目撃した妻は、動揺のあまり、相手が悪いかのような物言いをする。それをいさめつつ、男性に片思いしていた中学生時代のことなどに夫は思いを巡らせるが……。相手を見返りなく愛すること、家族であっても配慮することの大切さが、家庭内の無遠慮なやり取りを超えて描かれる。

かつて著者は、恋人や友達でもない「名前のつかない関係性」の中で紡がれる「人が人を愛おしく思う気持ち」が好きだと語っていたが、まさにその言葉を具現化したような5編だ。どの主人公においても、彼らをめぐる無償の情愛が胸にしみる。すべての“環と周”を、著者自身と地続きの人間として描いているからなのだろう。そしてそれは、あなたの“誰かを大切にしたいと願う心”にもつながっている。

『環と周』 よしながふみ著  集英社 全1 巻 748円

『環と周』
よしながふみ著 
集英社 全1巻 748円

江戸編、明治編、戦後編、70年代編、現代編という5つの時代を舞台にして生きる、それぞれの“環と周”。名づけることのできない“好きのかたち”を描き出す。

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イラスト/ユリコフ・カワヒロ ※BAILA2023年12月号掲載

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