業務内容も仕事に求めるやりがいも持って生まれた個性も様々な人たちの経験談から見えてくる、自分らしいキャリアの築き方のヒントとは? 今回は管理職になることを選んだ、資生堂ジャパン株式会社の越間美布さんにお話を聞きました。
【管理職を選んだ先輩】資生堂ジャパン株式会社・越間美布さん
資生堂ジャパン株式会社 エイジングケアマーケティング部 バイスプレジデント
越間美布さん(45歳)
「エリクシール」「HAKU」「プリオール」を統括するマーケティング部長として、それぞれのブランドの戦略構築や人材の育成、業務効率化のための仕組みづくりを担っている。
ブランドを守る責任とプレッシャーに直面
美白美容液市場でNo.1の売り上げを誇る「HAKU」のブランドマネージャーとして、4年前に管理職のキャリアをスタートさせた越間さん。もともとマネージャーを目指していたわけではまったくなかったそう。
「どちらかというと全力で日々の業務に取り組んでいたことを評価され、引き上げてもらえたという感覚です。当時はマネージャーになるための試験があったのですが、テストとなると合格したくなる性分で(笑)。もちろん先輩方が育ててきたブランドを汚してはいけない、成長させなければならないという不安やプレッシャーもありました」
今年からさらに役職が上がり、マーケティング部門のバイスプレジデントに就任。3つのエイジングケアブランドを統括し、35人のメンバーをまとめている。大きな責任を背負うポストを任されながらも、「おかげさまで楽しめています」と笑う裏には、彼女が築いた独自のマネジメントスタイルがあった。
「リーダーにも色々な個性があっていいと思うんです。私の場合は『ついてこい!』と強いリーダーシップを発揮するタイプではなく、自分の得意なこと、苦手なこと、個人的な想いもすべてメンバーに吐露した上で方向性を伝えていくスタイル。困り事があったらレイヤー関係なくチャットにSOSを出して相談しています。自分からメンバーに門戸を開くことで『この人には話しやすいな』と思ってもらい、気軽に相談しやすい環境づくりを心がけています」
「自分らしいマネジメントスタイルを見つけ管理職の楽しさややりがいを知りました」
過去の失敗から学んだ管理職としての覚悟
強みは人の想いに寄り添えること。ただし、相手の心情をくみ取りすぎるあまり、過去にはそこが弱点になってしまったこともあるという。
「私が持つべき判断基準はブランドの価値を最大化できるかどうか。関わるすべての人が納得する判断ができればいいのですが、場合によっては困難な道を選択しなければならない場面も生じます。打ち合わせをする中で心が揺れてしまい、他部門の意見に寄りすぎた判断をしてしまったことがあったんです。あとから『それはブランドの価値を守る判断ではない』と指摘され、いたく反省しました。立場上、厳しい判断をしなければいけないことがあるときは相手にリスペクトを示しつつ、個人的な心情は“幽体離脱”のように切り離してお伝えするようにしています」
9歳の娘さんを育てる母親でもある越間さん。社員の80%以上を女性が占める資生堂グループでは、子育て中でも働きやすい環境が整っている。
「コアタイムのないスーパーフレックス制なので、個人の事情に合ったフレキシブルな働き方ができます。子どもの送り迎えや通院などの予定も共有し合い、いつでも確認できるようにしているので、『この人にはこの時間に相談しよう』と互いに調整できるのはありがたいですね。保育園が休園したコロナ禍には、娘と一緒にリモートワークに参加したことも。個人的には、親が一生懸命働く姿を子どもに見せるのはいいことだと思っています。おかげで娘は自分も大人のチームの一員だと思って私の仕事を応援してくれています」
仕事も家庭も総力戦。強みや弱みを隠さず開示し合える関係性をつくることで、強力なワンチームを形成している。
「総力戦で戦えば苦手な部分をみんなが補完してくれますし、チームとしてできることが増えていく。自分だけでなくメンバーの成長を感じられることもやりがいになります。管理職は、ビジョンさえ明確に示すことができれば効率的に働けますし、必ずしもハードワークになるわけではありません。むしろ、日々視座が上がってやりたいことの幅が広がっていく感覚があります。目指していたわけではなかったけれど、結果的には管理職になってよかったと思っています」
「肌も人生も前向きにできる商品に関われて幸せ!」
越間さんのHistory
23歳 2002年 | 資生堂入社 |
27歳 2006年 | 高知県に赴任 |
29歳 2008年 | 東京本社に戻り、 |
管理職を選んだ 41歳 2020年 | |
45歳 2024年 | エイジングケア マーケティング部 |
管理職になる? ならない? 越間さん的回答
現場担当時代より、管理職になったほうが成長を感じられて楽しい!
撮影/花村克彦〈Ajoite〉 取材・原文/松山 梢 ※BAILA2025年1月号掲載