30代・40代の不妊治療のお悩みや疑問に医師が回答! 今回は不妊治療でかかる費用について聞きました。
Q:不妊治療の治療代は保険適用でどのくらい安くなる? 保険適用、自費のクリニックはどう違う?
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30代&40代女性の「リアルな妊活・不妊治療悩み&疑問」!
・「不妊治療が保険適用になったことはニュースで見ましたが、いくらがいくらになったのかが具体的な数字が知りたいです!」
・「30代後半で結婚、妊活できる年数が少ないと思うので、都内でも評判の有名クリニックで治療して確率を高めたいという思いが。今は不妊治療も保険適用となり、私の年齢だと3回は保険適用で採卵できると知りましたが、意中の病院は保険適用の治療をやっていないみたい。保険診療か自費診療か……どっちをとるべきか悩んでいます」
医師が回答!
1975年生まれ。山形大学医学部卒業、山形大学大学院修了。大学病院の不妊外来で生殖医療の基礎を学び、生殖医療専門クリニックにて長年不妊治療に従事。2017年よりリプロダクションクリニック東京にて女性不妊外来を担当、現在診療部長を務める。リプロ東京公式ブログでは、生殖医療の最新情報の発信も。
公式ブログはこちら。
https://ameblo.jp/reproductionclinic/
【ANSWER・1】保険診療を行っているクリニックでは、不妊治療が原則保険適用に
「令和4年4月から、人工授精などの『一般不妊治療』と、体外受精・顕微授精などの『生殖補助医療』について、原則保険適用になりました。
クリニックにおけるすべての治療が保険適用になったわけではなく、保険で厚生労働省が定めた基本的な治療を行うクリニックと、これまでどおり自費で自由な診療を行うクリニックがあります。診療の内容によって選べるようになり、選択肢の幅が広がったとも言えます。保険適用なら治療にチャレンジしてみたいという方々も治療できるようになり、入り口のハードルが下がったように思います。
保険診療を行っているクリニックでは、人工授精、体外受精のうち、厚労省に定められた基本治療であれば、3割負担の費用で行えるようになりました。
さらに、治療にかかった費用が一定額を超えた場合には、1カ月の自己負担額を抑える『高額療養費制度』の対象に。夫婦・カップルのうち、所得が多い一方の年収が約370万~770万円である場合、自己負担が1カ月あたり8万円程度で抑えられるようになりました。
新制度の年齢制限、行える治療の回数は以下の通りです」
・年齢制限
治療開始時において女性の年齢が43歳未満であること。
・回数制限
初めての治療開始時点の女性の年齢と回数の上限が。
・40歳未満なら通算6回まで(1子ごとに)
・40歳以上43歳未満なら通算3回まで(1子ごとに)
(※出典/厚生労働省(リーフレット)不妊治療の保険適用)
【ANSWER・2】保険適用のクリニックと自費のクリニック、治療内容に違いは?
「保険適用の治療を行うクリニックと、自費での治療を行うクリニック、その大きな違いは、体外受精の治療内容です。保険診療で行える治療は費用は3割負担で済みますが、厚労省によって使える薬や治療の方法が定められているため、あくまでも基本的な治療が対象。一方、当院のように自費診療を行うクリニックでは、保険診療に比べ費用の負担が大きくなりますが、保険適用の制限を受けずに自由な治療を選択できるのです。
体外受精では、これまで(保険適用が始まる前)の自費治療では、エコーの回数も注射もすべて自費でしたので、いろいろな薬が使えたのです。それが保険適用になったことで、どんな治療をしてもよいというわけにはいかなくなりました。厚労省で定められたルールのもと、ホルモン採血や注射の選択を行っていく。極端なことを言うと、たとえばこれまではエコーの回数も患者さんの状態によって10回でもよかったのが、保険適用の治療ではこの回数にも制約が出てくるようになりました。
この部分は保険診療で、でもあの薬も使いたいから自費で追加を……といった具合に使い分けることはできませんので、患者さんは最初に保険適用か、自費かを選ぶ必要があります。
保険適用の場合は、どのクリニックでも基本の治療方法は同じ。違いを出しづらくなったと言えますが、保険適用は費用面でやはり大きなメリットが。ですから、年齢的に余裕がある方は、まず保険診療を受けてみて、うまくいかなかったら保険外診療のクリニックへの転院を考えてみるのもよいと思います。40代であまり治療時間に余裕がない場合は、最初から自費のクリニックで自分に合った治療をカスタマイズしてもらうのもよいでしょう」
【ADVICE】医療費控除もぜひチェック!
「費用面の負担が大きい自費治療も、医療費控除を受けることができます。所得税がどの程度かによりますが、医療費控除を受けるとざっくりと3割以上は返ってくる場合も。所得の多い人は税金も高いわけですが、医療費分は所得がなかったことになるため、その分の税金が安くなるのです。例を挙げますと、保険診療だと3割負担のところが、自費診療でも3割戻って来れば7割負担で済むため、思ったほどは両者に差がないケースもあり得ます。カスタマイズされた治療で100万円ほどかかって、30万円戻ってくるならば、3割負担する場合と比べても大幅にコストパフォーマンスが悪いとまでは言えません。医療費控除はあなどれないものです」
※夫婦の所得金額やその割合により、控除額は大きく異なることがあります。共働きの場合は、所得が高い方で控除します(ただし、内縁の場合は各々が控除します)。
「気になるクリニックがあれば、ご家庭の収入から費用を計算してみるのもオススメです」
収入によっては自由診療でも負担が少ない場合も。年収から確認を!
取材・文/櫻木えみ