胚移植後はどう過ごすのが正解? パートナーといい関係を保つには? 30代・40代の不妊治療のお悩みや疑問にリプロダクションクリニック東京・診療部長兼看護診療支援部長 土信田雅一先生がお答え!
1975年生まれ。山形大学医学部卒業、山形大学大学院修了。大学病院の不妊外来で生殖医療の基礎を学び、生殖医療専門クリニックにて長年不妊治療に従事。2017年よりリプロダクションクリニック東京にて女性不妊外来を担当、現在診療部長を務める。リプロ東京公式ブログでは、生殖医療の最新情報の発信も。
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Q:胚移植後は、とにかく体を温めたほうが着床率も上がりますか?
【ANSWER】胚移植後の体温めは逆効果の可能性も
「受精卵を子宮に移植したあとにやりがちで、オススメしないのは、過度に体を温めること。というのも、体を温めることで着床率が上がるというデータも、冷え性の方は着床しづらいというデータも、実はないのです。中には、入浴で体を温めることすら妊娠にはよくないという論文もあります。実際には、15分くらいお風呂に浸かるくらいでしたら問題ないと思いますが、1時間は長いと思います。ほどほどにしておきたいものです」
Q:胚移植後の過ごし方はやっぱり安静がいちばん?
【ANSWER】安静にしすぎると逆にストレスが溜まり、妊娠に悪影響を及ぼす可能性も
「引越しの手伝いのように、重いものをものすごくたくさん持つのは控えたほうがいいと思います。ですが、それ以上に過度の安静は必要ないです。移植のあとは胚がちゃんと着床してくれるように、なるべく横になって過ごす方も多いのですが、そういったことが逆に精神的なストレスになってしまう可能性もあるんです。ついやりたくなってしまう気持ちは分かるのですが、ストレスになってしまうと本末転倒ですよね。そこまでする必要はないと知っておいてください」
Q:不妊治療中、パートナーといい関係性を保つにはどうしたら?
【ANSWER】女性が求めていることをきちんと男性に伝えて
「通院や治療の話を毎日聞いてほしい女性もいれば、要所以外は特に聞いてほしくないという女性もいます。そういった要望を『言わなくても察してくれるはず』と考えて黙っているのではなく、『私はこうしてほしい』ときちんと男性に伝えるようにすれば、男性もそのリクエストに沿った行動をとりやすくなりますし、お互いイライラするシーンも減ると思います」
Q:不妊治療中の精液採取前、男性はどう過ごしたらいい?
【ANSWER】精子の質を高めるには、2日に1回は射精を行って
「射精をせずに溜めておくと精液量が増えるので、つい回数を減らして精液採取に備えようとする男性もいます。ですが、2日に1回程度の射精では、精液量はさほど減りません。高頻度で出しておいたほうが、DNAの損傷が少ない精子が出る確率が上がるのです」
Q:精子の質を高めるためにオススメの生活習慣とは?
【ANSWER】精巣のまわりは温めないように。男性の下着は緩めのトランクスが最適
「精子は熱に弱く、精巣が外に出た形状になっているのは放熱のため。せっかく放熱をしているのに、わざわざ熱がこもるようなことをするのは控えるようにしましょう。膝の上にノートパソコンを直接置くのではなく、バッグを置いてからその上にパソコンを置く。それだけでも熱が精巣に伝わりにくくなると思います。また、体に密着するボクサーショーツやスパッツなどは、精巣に熱がこもりやすくなるので控えたいもの。最近流行のサウナですが、妊活中は控えておいたほうがいいでしょう」
Q:胚移植前はやっぱり性交渉をしないほうがいいですか?
【ANSWER】胚移植前の性交渉=実はよいという説も
「着床はどんなメカニズムで起こるかというと、精子の成分が子宮に入ることで軽く炎症が起こり、それが修復される過程で免疫寛容でいろいろなものを受け入れられる状態に。そこに、女性の体にとっては“他人”である受精卵が入ってきて、着床するといわれています。その理論でいうと、胚移植前の性交渉はいいはずなんですね。不妊治療では、クリニックによってはそういったことを目的とした治療、胚移植の時にわざと軽い炎症を起こして、それを治す過程を作らせることで着床率を上げるというオプション治療もあるぐらいです」
Q:40代、「どうせ年齢で無理そう」と不妊治療に踏み出せない。何歳まで希望を持っていい?
・「41歳で出会った彼と42歳で結婚。現在43歳、不妊治療を考えているのですが、職場では“もう子どもを望んでいない人”と思われています。40代も半ばに向かっていく年齢、クリニックに行っても、この年代は妊娠率が低いというつらい現実を突きつけられて泣くだけかも……?と弱気になったりも。自然妊娠ができなかったならば、もう諦めるべき年齢なのでしょうか?」
【ANSWER】40代半ばまでは「まだまだいける」年齢!
「当院の治療、感触でお答えすると、たとえば質問者さんのように43歳ぐらいでしたら『まだまだあり』な年齢。諦めるような年齢ではまったくないです! 可能性は下がるとはいえ、43歳以上で妊娠されている方もたくさんいます。そういう年代の方は、最初から不妊治療専門のクリニックに行ったほうがよいと思います。正しい知識で早く検査や治療に取り組んでもらうことが大事だと思います」
Q:体外受精をすることに。どんな食生活をしたらいい?
・「外食、コンビニ食、ファストフード多めの私。もうすぐ40代、不妊治療を考えていますが、食事はどのように改めたらいい?」
・「女性ホルモンを意識して大豆イソフラボンが含まれる大豆を食事に取り入れ! 毎朝豆乳を飲み、昼か夜で豆腐、納豆を食べています。女性ホルモンが出て妊娠しやすくなる?」
【ANSWER】ヘルシーな「地中海式の食事」がオススメ!
「妊娠には、いわゆる『地中海式の食事』がよいと言われています。魚介類、鶏肉、フルーツ、緑黄色野菜、大豆以外の豆類、油ではオリーブオイルなどが妊活によいとされていますので、食生活で意識してみてはいかがでしょうか」
Q:不妊治療の治療代は保険適用でどのくらい安くなる? 保険適用、自費のクリニックはどう違う?
・「不妊治療が保険適用になったことはニュースで見ましたが、いくらがいくらになったのかが具体的な数字が知りたいです!」
【ANSWER・1】保険診療を行っているクリニックでは、不妊治療が原則保険適用に
「令和4年4月から、人工授精などの『一般不妊治療』と、体外受精・顕微授精などの『生殖補助医療』について、原則保険適用になりました。クリニックにおけるすべての治療が保険適用になったわけではなく、保険で厚生労働省が定めた基本的な治療を行うクリニックと、これまでどおり自費で自由な診療を行うクリニックがあります。診療の内容によって選べるようになり、選択肢の幅が広がったとも言えます。保険適用なら治療にチャレンジしてみたいという方々も治療できるようになり、入り口のハードルが下がったように思います」
【ANSWER・2】保険適用のクリニックと自費のクリニック、治療内容の違いは、体外受精の治療内容
「保険適用の治療を行うクリニックと、自費での治療を行うクリニック、その大きな違いは、体外受精の治療内容です。保険診療で行える治療は費用は3割負担で済みますが、厚労省によって使える薬や治療の方法が定められているため、あくまでも基本的な治療が対象。一方、当院のように自費診療を行うクリニックでは、保険診療に比べ費用の負担が大きくなりますが、保険適用の制限を受けずに自由な治療を選択できるのです」