夫が不妊治療に消極的、セックスレスでも不妊治療はできる?など、30代・40代の不妊治療のお悩みや疑問に医療法人オーク会 産婦人科医の船曳美也子先生お答え!
神戸大学文学部心理学科、兵庫医科大学卒業
兵庫医科大学、西宮市立中央市民病院、パルモア病院を経て医療法人オーク会へ。
エジンバラ大学で未成熟卵の培養法などを学んだ技術と自らの不妊体験を生かし、診療にあたる。また、早くから不妊と肥満の関係性に着目し、2ヶ月で14kgの減量に成功した患者様の排卵障害が改善したことから、ダイエット・プログラムを発案。国内外の学会発表多数あり。
Q:年齢? 疾患? 不妊治療クリニックでの治療を考えるべき人とは?
【ANSWER】不妊期間と年齢で判断を
「クリニックでの治療を始めるかどうかは、不妊期間と年齢が大きな判断要素になります。女性が35歳未満でしたら、子どもを欲しいと思って妊活を始めてからの妊活期間が1年にわたっていたらクリニックへ行くことをおすすめします。35歳以上であれば妊活期間半年が目安になります。また女性の年齢が38歳以上の場合は、妊活の期間に関係なく、早めに受診するのがよいと思います。体外受精での妊娠率は32歳くらいから下がってくるのですが、38歳からその下がり方が大きくなるのです」
Q:生理がたまにしか来ない人や見た目が若い人は、年齢のわりに卵子の数が多い?
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「40日周期で生理が来ています。27日周期の人よりも生理の回数が少ない=卵子がたくさん残っていると思っていたのに、AMH検査での数値は悪く、カルテに『低AMH』と書かれていました。女性らしい体型ではない私、女性ホルモンが少なめで、もともと卵子が少なかったということ!?」
「40代ですが童顔で若くみられ、転職先でも『20代だと思ってた!』などと驚かれています。そうは言っても40代も半ばに近い年齢。新婚で、一刻も早く不妊治療を始めたいと思っているのですが、35歳の夫からは『見た目が若いから不妊治療なんてしなくても産めるはず』などと楽観的なことばかり言われます。夫の言うとおり、見た目年齢は妊娠率に影響する、なんてことはあるのでしょうか!?」
【ANSWER】卵子の数は、女性の見た目年齢や生理の回数とは関係なし! 初潮以降、毎日減っていく
「卵子が多いか少ないかは、女性の外見ではまったく分からないんです。若く見える方であっても卵子の数が多いというわけではないのです。AMH検査(卵巣予備能検査)をしてみないと卵子の数は判断できません。『生理のたびに卵子がひとつ減っていく』と理解している患者さんも多いのですが、それは誤解です。月経で使われなかった未熟な卵子も吸収されてなくなりますし、たとえ生理不順で月経が止まってしまっている方でも、毎日卵子の数は減っていくのです」
Q:セックスレス状態で不妊治療クリニックに行くっておかしいですか?
【ANSWER】セックスレスの状態でも、不妊治療は可能!
「セックスレスの状態で受診されるご夫婦やカップルは非常に多いので、まったく問題ありません。一定期間の性交渉を行っていなくても、子どもが欲しい、2人目が欲しいということで2人の間で合意が取れていれば、治療は始められるのです。初期的な選択としては、シリンジ法や人工授精があります。どちらの方法も、超音波検査で卵の成長を見ながら、受精の確率の高いタイミングを確認して行うことができます」
Q:夫が不妊治療に消極的。それでもクリニックでできることはある?
【ANSWER】治療を受ける場合、男性側の同意も必要
「不妊治療を始めると、治療や来院回数は女性が圧倒的に多いです。ですが、男性も参加しなくてはならない治療は確実にあります。排卵の際に、“精子を出す”ことだけは男性に頑張ってもらわないと、妊娠成立には結びつきません。治療については、ご夫婦、カップルできちんと話し合ったほうがよいと思います」
Q:不妊治療中は女性のイライラが爆発するって本当ですか?
【ANSWER】ホルモンバランスのほか、不条理さにイライラする方が多い
「月経前になると気分がすぐれない等の症状が出るPMSは、排卵後に分泌される黄体ホルモンの作用によって起こるもの。不妊治療では、このPMSでイライラの原因となるホルモンと同じものを補充するケースが多く、似たようなイライラを感じやすくなります。また、ホルモンバランスとは関係なしに、治療の不条理さにイライラしてしまう女性も多いように感じています。『ここまで進んでダメだったら体外受精はやめる』など、終わりをはっきり決めてから治療をスタートさせるのも一案です」
Q:不妊治療中、夫へのイライラが止まりません。このままじゃ夫婦仲が……。
【ANSWER】男性も医師と直接話して、治療を“自分ごと”に
「男性側にも不妊治療への知識がしっかりあれば、イライラしている女性を理解し、受け止めやすくなるように思います。男性側にオススメしたいのは、積極的にドクターの話を聞くこと。女性を通して聞くより、ドクターと直接話したほうが男性が不妊治療を自分ごとと捉えられると思います」
Q:忙しくても不妊治療にチャレンジできますか?
【ANSWER】不妊治療の日程は原則“卵次第”!
「タイミング法や人工授精前の超音波検査でしたら、ある程度の予測は立てられるので2〜3日程度の日程調整なら可能なことも多いのですが、不妊治療は原則“卵次第”。患者さんの都合で日程を変えることは難しいケースも多いです。特に気をつけたいのは採卵の周期。採卵のための準備期間を無駄にしないためにも、前もって予定が入るかもしれないと分かっている時期に、採卵の予定を組むことは避けたほうがよいでしょう」