なぜかむしょうにさみしい夜。みんなはどう乗り越えている? 人との距離感を無理に詰めようとすると苦痛や噓が生じてしまうと語る、お笑いタレント・ミュージシャンのふかわりょうさん。さみしさと上手に向き合い、乗り越える方法を教えてもらった。
人間関係は惑星のようなもの。距離感があってちょうどいい
お笑いタレント・ミュージシャン
ふかわりょうさん
1974年生まれ、神奈川県出身。「バラいろダンディ」(TOKYO MX)のMCやROCKETMAN名義の音楽活動など多方面で活躍。昨年出版したエッセイ『世の中と足並みがそろわない』(新潮社)が好評発売中。
「僕自身は“さみしい”という言葉に置き換えるような心境になることはなくて。精神的に不安定というか、バイオリズムの波は絶えず流れていて、悲観的になることもある。でもそれをさみしいという言葉にしていません。お医者さんに言われてもそんなことないってあらがいたい。でも、そういった症状をひっくるめてさみしいというのであれば、僕はめちゃくちゃさみしい人間だと思います。ただ、このさみしさと定義づけられているもの(以降さみしさ)は、僕というメンヘラおじさんを動かすエンジンの役割でもあって。それが創作の原動力になっているので、僕にとってはとても重要な部位なんです。
人間、『わかってもらおう』とすると苦しくなりますよね。僕自身、みんなに共感してほしいわけじゃないけど、自分の思いをおかしなものとして片づけられてしまうときの切なさというか。自分は足を止めて路傍の草花に目を向けていたいのに、そんなのいいからって置いていかれてしまうような感覚がずっとあります。でもそれは不幸ではなくて。自分と人は違うということをフラットに受け止めるだけでいいんだと思う。
そもそも、“人と仲よくなければならない”というのも思い込み。僕の考えでは、人と人とは宇宙を形成する惑星のようなもので、お互いに軌道に沿ったちょうどいい距離感がある。それを無理に詰めようとすると、苦痛や噓が生じてしまうと思うんです。少し前にも大学生がトイレでお弁当を食べる行為が話題になりましたが、孤立とさみしいはイコールではありません。周囲からさみしいと思われているんじゃないかという錯覚が、自分のさみしさにつながってしまっている。でも、孤立を恐れない強さがきっと人生では役に立ちます。それには、本当に好きなものを見つけて大事にすること。それは対人間である必要はなくて、動物でも、一本の映画やラジオだっていい。概念でもかまわない。自分の好きを信じ抜けば、さみしさなんて覆すような大切な居場所になると思いますよ」
ふかわさんのさみしい夜の推薦映画
Album/アフロ
『スクール・オブ・ロック』
「音楽愛にあふれていて、とても痛快! エンドロールまで楽しめるので、1年に一度ぐらいのペースでリピートしています。気持ちがほがらかになるし、お酒を飲みながら観るのにぴったり」
Everett Collection/アフロ
『イントゥ・ザ・ワイルド』
「まさしく“ひとり”。孤独というより孤高を味わえる映画。なにげない出会いの描写がキラキラしていて、人生を前向きにとらえることができるはず。自宅にいながら、最高の旅に出られます」
取材・原文/谷口絵美 ※BAILA2022年1月号掲載