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「物流の2024年問題」について大江麻理子キャスターと一緒に深掘り!【働く30代のニュースゼミナール vol.41】

テレビ東京『WBS(ワールドビジネスサテライト)』の大江麻理子キャスターがセレクトした“働く30代女性が今知っておくべきニュースキーワード”を自身の視点から解説する連載。第41回目は「物流の2024年問題」について大江さんと一緒に深掘りします。

今月のKeyword【物流の2024年問題】

ぶつりゅうの2024ねんもんだい▶2024年4月1日から働き方改革に関する法律が適用され、トラックドライバーなど自動車運転業の時間外労働の上限が年間960時間になる。それに伴い輸送量の減少が懸念され、対策しなければ2030年には輸送能力が30%以上不足するおそれもあるとして緊急の取り組みが求められている。

今月のKeyword【物流の2024年問題】

物流の課題解決は政府、企業、消費者、社会の努力が必要です

関連ニュースTopic

2019年4月

多様な働き方の実現や長時間労働を是正するため働き方改革関連法が施行
労働環境の改善による生産性向上や人手不足解消を掲げ、大企業では時間外労働の上限規制などが開始。2020年4月に中小企業、2024年4月から自動車運転業などで適用
2022年11月

政府の検討会にて物流の2024年問題による輸送能力不足の試算を発表
関係省庁が連携して開催する「持続可能な物流の実現に向けた検討会」で、対策を講じなければ輸送能力が2024年には約14%、2030年には約34%不足すると推計された
2023年10月
政府は「物流革新緊急パッケージ」を物流の2024年問題対策として策定
政府は関係閣僚会議を開き、再配達率の半減に向け「置き配」を選んだ利用者などへのポイント還元のほか、鉄道や船舶の輸送量を倍増するための支援など対応策をまとめた

バイラ読者にアンケート

 (回答数110名 2023年9月22日〜26日に実施)

Q 宅配便をどのくらいの頻度で受け取っていますか?

Q 宅配便をどのくらいの頻度で受け取っていますか?

最多は「月に2~3回程度」で約3割。「週に2~3回以上」「週1回程度」も約2割ずつ。ネット通販やフリマアプリでの購入、ふるさと納税などの目的がほとんどで、「コロナ禍以降、宅配便利用が増えた」という声多数

大江ʼs eyes

皆さんと同じように、私もネット通販をよく利用しています。全国津々浦々に、ほとんどタイムラグなくものが届く日本の物流は奇跡的だと感じます。その一方、それが物流従事者の長時間労働のもとに成り立っているという点は、社会全体で考えて変えていく必要があると思います

Q 「2024年問題」という言葉の意味を知っていますか?

Q 「2024年問題」という言葉の意味を知っていますか?

意味までの認知度は4割。知っている人からは「輸送能力不足への対策として何が行われていますか」「個人でどのような心がまえをすべきですか」という質問が。知らない人からは「問題による影響を知りたい」など

大江ʼs eyes

問題が差し迫っていることもあって、半数近くの方が内容も含めてご存じですね。物流はすべての根底といいますか、きちんとものが滞りなく流れ、届くことが今の日本の社会の前提になっていますから、それが滞ってしまうと、生活や仕事などあらゆることに影響が出てくると思います

Q 宅配便を受け取るとき再配達の削減を意識していますか?

Q 宅配便を受け取るとき再配達の削減を意識していますか?

「とても・やや意識している」を合わせると約9割。「置き配を選ぶ」「宅配ロッカーの利用」「アプリで配達時間を変更」など再配達削減の工夫をしている人が多かった。「不在票が入っていると申し訳なく感じる」という意見も

大江ʼs eyes

再配達を減らし、一回で荷物を受け取れるようにしたいという思いは、どなたも共通していると思います。2024年4月からトラックドライバーの労働時間規制が始まると輸送能力不足が懸念されますので、今から各自が意識して再配達をしなくてもいい状況をつくっていくことが大切です

Q 勤め先や仕事において2024年問題による影響はありますか?

Q 勤め先や仕事において2024年問題による影響はありますか?

最も多く挙がった影響は「商品や備品の手配が遅れること」。メーカー、歯科助手、システムエンジニア、卸売り、販売、介護、学校事務など様々な業種で問題になっているよう。「運送コストの見直しにつながった」という声も

大江ʼs eyes

あらゆる業種の方から声が寄せられたことが印象的でした。これほど幅広い業種の方が同じ影響があると回答するのは珍しいことだと思います。2024年4月の適用開始直後は変化が大きく大変かもしれません。ですが、切羽詰まった状況だからこそいろんなアイディアが出てきています

「トラックドライバーの 労働時間規制により 物流が滞るのではと 懸念されています」大江さん

「トラックドライバーの労働時間規制により物流が滞るのではと懸念されています」

「2024年1月号ということで、その年を冠している問題を最初に取り上げるのがよいと思い、今回のキーワードを選びました。『2024年問題』とは、働き方改革関連法の施行に伴った時間外労働の上限規制が5年間猶予されていた業種に、2024年4月から規制が適用されることで生じる問題を指します。対象の業種はトラックドライバーなどの自動車運転業や建設業、医師です。各業界に課題がありますが、今回は『物流の2024年問題』を取り上げます」と大江さん。どんな問題が生じるのですか。

「トラックドライバーの労働時間が短くなることで、物流が回らなくなるのではと懸念されています。規制の適用が猶予されていた業種というのは、長時間労働が前提になっている、人の労働力に頼る割合が大きい労働集約型の産業です。急な適用が難しいため、猶予期間に効率化を図り、生産性を上げて労働時間を短くする努力をしてくださいということになりました。ところが、ドライバーの高齢化や価格転嫁が進んでいない業界背景による人手不足もあり、まだ対応できていない部分があるのです」

このままでは2030年には輸送能力が約34%不足するとの試算もあり、政府は対策として「物流革新緊急パッケージ」を策定。

「抜本的な改革として、トラックに代わり鉄道や船の輸送量を倍増させる目標や、将来的に高速道路で自動運転トラックが走行できるように環境を整える計画も盛り込まれました。トラックドライバーの労働負担を軽減する設備やシステムへの投資、DXによる効率化なども掲げられています。労働集約型だったビジネスモデルをどう変えていくかという点で、企業の後押しができるような政策が求められています」

『WBS』では、課題解決のための企業の新しい取り組みを数多く報道している。

「デジタルツールを使って、トラックドライバーの待ち時間が効率化された例が興味深かったです。荷物の積み下ろしの待ち時間が長く、呼ばれるまでずっと待ち続けていたドライバーさんが、システムのDX化により、スマートフォンで順番や推定時間が受け取れるようになり、仮眠が取れたり、待ち時間の短縮につながったりしていました。ほかには、長距離のトラック輸送では、運送会社が地域ごとに連携し、リレー方式で輸送することで労働環境が改善された例も。また、食品の加工や包装など作業別に拠点が分かれてその都度輸送していたものを、倉庫内を多機能化して一カ所にまとめ、効率化した企業の例などもありました」

「社会を体にたとえると物流は血流。滞ると日本経済や社会全体がゆらいでしまう」大江さん

「社会を体にたとえると物流は血流。滞ると日本経済や社会全体がゆらいでしまう」

アンケートでは、読者から心配の声も。

「ものが滞りなく流れ、届くことは今の日本社会の前提になっています。それが滞ってしまうおそれは、生活やすべての仕事に関わりますので、多くの皆さんが意識せざるを得ないのではないかと思います」

世界の中でも、ほぼタイムラグなくものが届く日本の物流網は奇跡的だと大江さん。

「その奇跡的な状況をつくり上げてくれている業界の方々には感謝しかありません。ただ、一方でそれは多くの方の長時間労働のもとに成り立っていた部分が大きく、サステナブルではないともいえます。すべての人が人間らしい生活を送れて、適正な対価を得られ、しかも利便性が高く効率がよいというのが理想の姿だとすると、まず変えるべき点はやはり働き方ではないでしょうか。物流という大事なインフラを支える方々の労働環境を是正する機会ととらえ、政府、企業、消費者の三者の努力が必要な局面だと思います。この問題に取り組むための様々な改革が、生産性を飛躍的に高めるきっかけになるかもしれません。再配達を減らすために、色々なものをまとめて一回で注文したり、置き配を選んだりと消費者ができる工夫もあります。置き配が心配な方もいるでしょうから、その場合はデジタルの力を使って確実に家にいる時間に届くよう設定する、家以外の場所でも荷物が受け取れるようにするなど、すれ違いをなくす仕組みもさらに必要かと思います」

読者が「物流の2024年問題」のニュースを見る際、持つとよい視点はありますか。

「社会を体にたとえると、物流は血流。どこかで血流が滞ると体全体に影響が出てくるように、物流がゆらぐと日本経済や社会全体がゆらいでしまいます。ですので、このゆらぎをなるべく減らすために『自分にできることって何だろう?』という視点や、『物流のゆらぎが一体どれくらい起こりそうか?』という状況をニュースでくみ取っていくことが重要ではないでしょうか。物流は社会の礎であり、前提なのだという視点でニュースを見ていただければと思います」

大江麻理子

大江麻理子


おおえ まりこ●テレビ東京報道局ニュースセンターキャスター。2001年入社。アナウンサーとして幅広い番組にて活躍後、’13年にニューヨーク支局に赴任。’14年春から『WBS(ワールドビジネスサテライト)』のメインキャスターを務める。

撮影/木村 敦 取材・原文/佐久間知子 ※BAILA2024年1月号掲載

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